My Cinema Talk World: American Honey / アメリカン・ハニー(原題) - 2016

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2017/02/28

American Honey / アメリカン・ハニー(原題) - 2016




『ラ・ラ・ランド』の前売り券を買っておきながら、まだ見ていない。
時間がないわけではないけれど、来週は息子の受験日もあって、心に余裕がない。
劇場に行っても楽しめない気がしている。
とはいいつつも、自宅では旧作を見たり、取り寄せた海外版DVDを観賞したりはしている。
昨年からネットで知って惹かれる1本があり、少し前にDVD(北米版)で観賞。
ひさびさに琴線にふれる作品、期待通りだった。

アメリカン・ハニー(原題:American Honey)

監督:アンドレア・アーノルド / 製作年:2016年


映画『American Honey』に流れるカントリーミュージック『アメリカン・ハニー(2010)/ レディ・アンテベラム』を聴いてしんみりしながら、“旧きよきアメリカ”とはいつのことをいうのだろうとふと考えてしまう。
私が考える“旧きよきアメリカ”とは、自分が小さい頃にテレビで放映される映画で見ていた時代のこと...経済的に豊かで映画・音楽文化が発展していた頃のアメリカだ。
本作は『アメリカン・ハニー』の歌詞に出てくるようなすくすくと育った奔放な女の子が大人になっていく数ヶ月を描いている。
ノリのいいヒップホップ、そして対をなす心に染みわたるカントリーミュージックを配して作品にメリハリをつけている。

ストーリー
18歳のスター(サシャ・レーン)は、父親違いの妹弟の面倒を見ながらその日を暮らしていた。
飲んだくれの継父は、いやらしくスターの体をさわりまくる。イヤなことを耐え忍ぶ悲惨な日々。
そんなある日、Kマートで奇妙な集団に出会う。
バンに乗りこみ、家々を回って雑誌を売りながら旅をして暮らす若者たちだった。
ミジメな生活から逃げ出す一心で仲間に加わることにするスター。
若者たちの中に、偉才をはなつ青年ジェイク(シャイア・ラブーフ)がいた。
ジェイクや若者たちの仕事ぶりに常に目を光らせるボスは、クリスタル(ライリー・キーオ)だ。
ジェイクにマガジン・セールスの手ほどきを受けるうち、ほどなく二人は愛し合うようになる。

みずみずしい映像はカメラワークの賜物


キャスト
スター − サシャ・レーン
ジェイク - シャイア・ラブーフ
ペーガン - アリエル・ホルムズ
クリスタル - ライリー・キーオ
コリー - マッコール・ロンバルディ

スタッフ
監督・脚本:アンドレア・アーノルド
撮影:ルビー・ライアン
公開:2016年5月15日(カンヌ映画祭) 2016年9月30日(アメリカ)
製作国:イギリス
原題:American Honey

ジェイクはクリスタルの腰巾着的な存在?!

スターを演じる新人サシャ・レーンが、素晴らしい!
その姿を見ているだけでも飽きない。
以前にべた褒めした『アデル、ブルーは熱い色(2013)』 のアデル・エグザルホプロス、もっと遡って『ベティ・ブルー(1986)』のベアトリス・ダルを彷彿とさせるカリスマを感じる。
さりとて、ベアトリス・ダルのような心の弱さを秘めたタイプではなく、その真逆。
彼女を見ていると、何か精とか精霊的なものが憑いた力強さを感じさせる。サシャ・レーンのルックス...特に目力からくるのだろう。
彼女の父親はアフリカン-アメリカン、母親はニュージーランド人でマオリ族の血を引くらしい。
サシャと対照的なのがライリー・キーオ演じる若者たちのボス、クリスタルの気だるげな目だ。
(ライリーは、リサ・マリー・プレスリーの娘。ちょっとクリステン・スチュワートに似てます)
劇中のスター、ジェイク、クリスタルの関係の変化が面白い。
ジェイクがスターを本気で好きなのか、金にいやしくオンナを利用しているだけの男なのか謎だ。
しかしながら、中盤からスターとの関係が徐々に翻倒していく。

陽気にヒップホップにのって盛り上がりながらも、どこか覇気がない若者たちと一線を画すスターが放つオーラを手持ちカメラで収めるカメラワークが秀逸だ。
中でも、ジェイクが運転する車の助手席で立ち上がり、ノリノリで踊るワンシーンがなんともキュンとそしてジーンとさせる。

サシャ・レーン以外では演じきれない主人公スター

カントリーミュージックがラジオから流れてくるとスターは奔放に叫ぶ。 
Wow!   I feel like I’m ****ing America !!

本作のポスターにもなっているシーンだ。
人生の中の一時期だけ期間限定で放たれるオーラと流れゆく一瞬一秒の風景がシンクロして美しい。

ラストは、受け手にあれこれと考えさせる終わり方でとても気に入った。
ジェイクが、スターにとんでもないものを手渡すのだ...何か?!
言わないでおこう!
2016年カンヌ国際映画祭でJury Prize(審査員賞)を受賞。
日本公開はされない(DVD発売なし)ながらも、見てよかったと思わせるロードムービーだ。
163分と若干長尺なのは、うーん...ヒップホップで浮かれるシーンが長過ぎたか?!
いづれにしても
映画でアメリカアメリカした風景を眺めつつも、先に触れた“旧きよきアメリカ”は、もう消滅していくんだろうなって感じてしまう作品だった。

追記 :
アスペクト比4:3にした画面は、効果的だと思いました...大画面で見たい!


参考までに...レディ・アンテベラムが歌う歌詞の一部です。

There's a wild, wild whisper
Blowin' in the wind
Callin' out my name
Like a long lost friend
Oh, I miss those days
As the years go by
Oh, nothin' sweeter than summertime
And American honey
(LADY ANTEBELLUM 『American Honey』より)




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