My Cinema Talk World: モーリス ― アイヴォリー作品の真骨頂

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2017/06/11

モーリス ― アイヴォリー作品の真骨頂


男同士の濃厚なキスを初めて見た衝撃作


先日、6月7日は昨年この世を去ったプリンスの誕生日でした。
ミネソタ州ではプリンスの栄誉と業績をたたえてこの日を『Prince Day』としました。
私も、その日はラッキーなことにお休みでしたので、VHSで1985年のRevolutionのライブを鑑賞したり80年代のアルバムを聴いていました。

さて ―― 6月7日は、映画監督ジェームズ・アイヴォリーの誕生日でもあります。
先日、30年ぶり(まではいかないかな…20何年かぶり)くらいに『モーリス』をみる機会ができました。
日本では1988年に公開されましたが、劇場で見ることは叶わず。
映画好きの友達が、関東に住んでいたので(正確に言えば、福島と栃木の県境!)地上波放映の際にビデオに録画してもらいました。
全体的に薄暗い場面が多い作品で、おまけに電波も悪くて時々ノイズが入ったりしていましたが、その時からマーチャント―アイヴォリー作品では好きな映画の1本になりました。

モーリス(原題:Maurice)

監督:ジェームズ・アイボリー / 製作年:1987年


耽美な映像

ストーリー
ケンブリッジ大学に学ぶモーリス(ジェームズ・ウィルビー)は、クライブ(ヒュー・グラント)と知り合いやがてお互いに深く惹かれ合うようになる。
お互いの家を行き来するうち抱き合い口づけを交わすも、体の関係には歯止めがかかっていた。
モーリスは亡き父の後を継ぎ株の仲買人に、クライブは弁護士としてそれぞれ別の道を歩み始めた。
その矢先、大学の同期生のリズリー(マーク・タンディー)が兵隊に手を出そうとして風紀罪で逮捕される事件が起きる。
彼は、将来を嘱望されながらも全ての地位を剥奪されてしまったのだった。
その一件からクライブの態度は一変 ―― 突然ギリシャへと旅立ってしまう。
それ以降、モーリスとクライブの運命が大きく変わって行く。

キャスト
モーリス・ホール : ジェームズ・ウィルビー
クライヴ・ダーラム : ヒュー・グラント
アレック・スカダー : ルパート・グレイヴス
バリー医師 : デンホルム・エリオット
デュシー氏 : サイモン・キャロウ
ラスカー・ジョーンズ : ベン・キングズレー
クリケットの見物客(カメオ) : ヘレナ・ボナム=カーター

スタッフ・作品情報
監督: ジェームズ・アイボリー
脚本: キット・ヘスケス=ハーベイ ジェームズ・アイボリー
原作: E・M・フォースター
製作: イスマイル・マーチャント
製作年: 1987年
製作国: イギリス
配給:     ヘラルド・エース=日本ヘラルド映画
原題 :     Maurice

ジェームズ・アイヴォリーという監督さんは、ヘンリー・ジェイムズやE.M.フォースター作品の映画化で知られているので、始めの頃は勝手にイギリス人と思い込んでいた次第。
ところが、生粋のアメリカ人(カリフォルニア州バークレー出身)だという事実にびっくり。
始めは監督ではなく、映画のセットデザイナーを目指していたといいます。

80年代当時、見た時とほとんど見方が変わっていなかったことに自分自身驚いています。
クライブが情けない人間で、演じたヒュー・グラントに嫌悪感すら覚えるほどでした。
友人のリズリーが捕まったときに見せた臆病なあの態度には、思わず笑ってしまう。
同性愛者である自分にも危険が迫っていると急に焦り始めて、寝込んでしまうクライブは健気にも看病しようと世話を焼くモーリスをも突き放す ―― 自分から誘っておきながら...ネグリジェみたいな寝巻きを着て寝床に逃げ込む姿はあまりにも女々しすぎです。

しかしながら、男どうしが抱き合ったりキスをしたりという映画が80年代当時それほどなく、免疫も持ち合わせていなかったため、若干の抵抗はありました...うーん、抵抗というよりは驚きかな。
ビデオを録画してくれた友人は、「私、この映画ダメだわ!」って言っていたのを思い出します。


クライブから心が離れて行くモーリス

クライブからも突き放され孤独に震えるモーリスの前に現れるのが、クライブの屋敷の猟番アレック・スカダー。
彼は寝ている部屋に忍び込んだり、ロンドンの職場に訪ねて来たりと身分が低いにもかかわらずモーリスに近づき、果敢に愛を示します。
アレックには狡猾な面もあって、モーリスが騙されてしまうのではないかと心配になったりもしますが、貧しさゆえの生きる知恵だったのかもしれません。
クライブは半ば勢いで結婚してしまい、不安定になって医師ジョーンズ(ベン・キングズレー)の元に駆け込むモーリス。

結局は、モーリスは“自由”を、クライブは“安寧”を選んでそれぞれの道を歩んでいくことになります。
ラストでのモーリスとクライブのシークエンスで、彼ら(モーリス、クライブ、アレックス)が本当に幸福を手にいれたかがわかってくる ――
クライブは妻と明るく会話をしていても、夜寝室に入ると2人の間に隔りがあることを感じさせます。
完全にゲイの世界から離れた訳ではないことが想像できるでしょう。

ジョーンズ医師が言った言葉が心に響いてきます。

『同性愛が許される国に行くことだ。この国(イギリス)は昔から人間の本性を受け入れない国だから ―― 』

イギリスという国が伝統を重んじる(保守的!)ということであり、その厄介な国を舞台に因習と自己の狭間で苦悩する人々を描いてこそアイヴォリー作品の真骨頂です。
(このテーマを嫌う人も多いかと思いますが)

モーリス役のジェームズ・ウィルビーは『ハワーズ・エンド(1992)』では、超意地悪な貴族の役を演じていました。
本作では、アイヴォリー映画でおなじみのデンホルム・エリオット、サイモン・キャロウも出演していて、安定の演技を見せてくれています。
この二人は、どの作品においても殊のほか感じがいい!
デンホルム・エリオットについては、やたらと厳格な役ですが、実生活においてはバイセクシュアルであることを公表していたとのちに知って「あらっ?! 」ってカンジでした。

余談になりますが、
マーティン・スコセッシは、ジェームズ・アイヴォリー作品の世界観を表現したいがために『エイジ・オブ・イノセンス(1993)』 を撮ったと云われています。
(パク・チャヌクの著書で読みました。彼自身もマーティン・スコセッシの影響で、アイヴォリー作品を見るようになったそうです。)
ダニエル・デイ・ルイスも、アイヴォリー作品を意識してのキャスティングでしょうね。


はてさて、イギリスってゲイが多いんじゃないかと思っています。(気のせいか?)
アメリカの性科学者・動物学者 アルフレッド・キンゼイの言葉を引用させていただくと

男性は、異性愛と同性愛という二種類に分離した個体群からなるわけではない。この世は善と悪にはわかれない。すべてが黒いわけでも、すべてが白いわけでもない。自然が不連続なカテゴリーとしてふるまうことがめったにないのは分類学の基本である。ただ人類だけが分類を発明し、事実をむりやり分類棚に押し込めようとするのだ。
 (Wiki より)

カテゴライズしたのは人間です。
ということは、時代が変わればカテゴライズという重い枷も外されて行くのかもしれません。

『モーリス』でアレック・スカダーを演じたルパート・グレイヴスは、英国の貴公子ブームの時に私が一番のお気に入りだった俳優さんです。
(誕生日も偶然同じ、6月30日!)


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