My Cinema Talk World: 今こそ「必殺シリーズ」に回帰する!

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2017/11/12

今こそ「必殺シリーズ」に回帰する!


私が「必殺シリーズ」と初めて出会ったのは小学校低学年の頃だ。
母親がクラスの秀才の女の子が書道を習っていることを知り、私もその子と同じ塾に通わせることを決めた、その時期だ。
水曜と土曜の週二回。気が進まない書道塾に通うことになったその頃、土曜の午後1時〜2時までの時間帯に「必殺シリーズ」の再放送が放映されていた。
ちょうどお昼ご飯を食べ終えて塾の時間までダラダラと待っている時間だった。
一番初めに見たのはおそらく『助け人走る』だと記憶している。

我が家は、父親の帰宅が夜遅くなる ―― しかも不定期なので母親が子守がわりにテレビを見せておいたものだった。
それでも普通であったら、子供の面倒は家庭を守るべき母親がしっかり見るところであっただろうが、そうではなかったのだ。
そんなこともあって、時代劇やドラマは意味もよくわからないうちから見ていたのだ。

多くの時代劇は、勧善懲悪で成り立っていて最初は面白楽しく見ていても、次第にドラマの流れがわかってくる。
主人公は、悪を憎みそれを挫いて行くのが仕事で、妻は必ずと言っていいほど良妻である。
幼いなりに次第に
「昔はこんな人たちばっかりだったのか?そんなはずないだろう?! 」
という不埒な疑問が湧き上がってくるものだ。
そんな状況下に出ててきたのが「必殺シリーズ」だ。
登場人物は、お金をもらい闇の稼業を請け負う。
従来の時代劇のようにありきたりの殺陣を長々と見せるのではなく、斬新な殺し技が登場する。
マンネリの時代劇に新風を感じたのだった ――

近頃、テレビがついぞ面白くないのだ。
そこで、急に思い立って幼い頃に胸躍らせた時代に回帰することにしたのだ。
ここのところ気づけば時間がある限り「必殺シリーズ」を真剣に見ている。
子供の頃見ても深い意味がわからなかったことや、受け流していたセリフが深く懐に入ってくる。
オープニングにシリーズ特有のナレーションが入り、劇中の音楽一つにしてもフュージョンっぽい音作りでスタイリッシュ。

当時、元締の役は山村聰が好きで『必殺仕事人』になってからの元締 鹿蔵(中村鴈治郎)はイマイチだとあまり力を入れて見ていなかった。
それが今改めて見ると、至極いい!
ひとつひとつの演技やセリフがとにかく沁みるのだ。

必殺仕事人の元締 鹿蔵役は中村鴈治郎さん。中村玉緒さんのお父上です

『必殺仕事人』第1話 中村主水を再び闇の稼業に戻そうとするも、尻込みする主水にしみじみ言う ――

三途の川の水音がすぐ側で聞こえるようになってくると人は皆昔のことを考えるものだ「わしは何をやってきた、今までわしは何をやってきたのだ」とね。
そんな時冥土へ持って行く土産がないというものは酷く寂しいものなんだ。
中村さん、お前さんは気の毒なお人だ。何もかも失くしてしまったらしいが、わしにはある ――
胸を張って冥土に持って行く土産がね。
これだ!この手はかのう屋(第1話に登場する悪党のこと)を殺った手だからよ!
(『必殺仕事人』第1話 より)

粋であることこの上なし。
闇の稼業に生きる業に痺れて、完全に殺(や)られてしまったのだった。
幸い、DVDやVHSのソフトも手元にあるのでしばらくドップリと浸かるとしようではないか!

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