My Cinema Talk World: 『そこのみにて光輝く』 ー 邦画にもこういう上質な作品があったのね。。。

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2014/11/24

『そこのみにて光輝く』 ー 邦画にもこういう上質な作品があったのね。。。



タイトルがそそられるなぁーって以前から思っていて、さらに「王様のブランチ」に出演者3人が出て映画が紹介された時点で心がざわざわしていたのだけれど上映館が少なかったのでDVD発売まで待とうということになり、ようやく昨日念願が叶いました。
まず、冒頭の15分ほどで「すごいなぁ、コレ!」ってパンチを一発喰らわされ、ラストシーンまであっという間でした。

ストーリー
定職を持たずぶらぶらとその日暮らしで生活していた達夫(綾野剛)は、パチンコ屋で見るからにヤンキー風のフレンドリーな青年、拓児(菅田将暉)と出会う。拓児に連れてこられたボロい家には、母親、寝たきりの父親、そして姉の千夏(池脇千鶴)がいた。達夫と千夏は互いに惹かれるようになり二人は結ばれる。やがて、達夫は千夏の衝撃的な事実を知る……。

キャスト
    綾野剛(佐藤達夫)
    池脇千鶴(大城千夏)
    菅田将暉(大城拓児)
    高橋和也(中島)
    火野正平(松本)
    伊佐山ひろ子(大城かずこ)
    田村泰二郎(大城泰治)

スタッフ
監督:呉美保
原作:佐藤泰志
脚本:高田亮
音楽:田中拓人
製作:永田守
音楽:田中拓人
撮影:近藤龍人
編集:木村悦子
製作会社:「そこのみにて光輝く」製作委員会
配給:東京テアトル 函館シネマアイリス
公開:2014年4月19日(日本)
タイトル:そこのみにて光輝く(THE LIGHT SHINES ONLY THERE)


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見終えた後ずーんとした余韻を残す、脚本、人物描写すべてにおいて作り込まれた作品でした。
見終わって余韻もさめやらぬうち、監督の名前が気になり調べると呉美保(お みぽ)氏という女性監督。
代表作は『酒井家のしあわせ』『オカンの嫁入り』。どちらもほのぼのとしたドラマらしい…あいにく2本とも見たことがありませんでした。
原作の佐藤泰志氏の小説も読んだことがないのですが、脚本の段階で若干設定など変えているそうです。
どちらにせよ、映画自体のもの凄い力に圧倒されるばかりなので原作に忠実か否かはどうでもよくなってきます。



人物の作り込みがハンパない、リアル感に圧倒されます。
演じる俳優陣…綾野剛、池脇千鶴、菅田将暉...この作品以降、きっと彼らを見る目が変わることでしょう、それほどの名演を見せてくれます。
綾野剛が演技が巧いというのはドラマなどで知っていたのですが、今回驚いたのは菅田将暉の演技力です。
巷で次々公開されてる内容のないお子さま向けの邦画しかイメージしてなかったので、若手でこんな演技する俳優がいること自体衝撃でしたね。
まだ21歳ですよ、彼。
関係ないけどJUNONボーイ(ベスト12に残った中の1人!)、TVの仮面ライダー出身です。(ついでに綾野剛も仮面ライダーでデビューしたそうですが)
綾野さんは、脚本を何行か読んだだけで出演を即決したとのことです。
はじめ時代設定とかいったいいつなんだろう?って疑問を持ちました。
よくよく見るとワンシーンで2013年のカレンダーがチラッと映るので、現代であるとわかりますが…そこも原作と違っているところです。しかしながら、そんなことはどうでもよくなってきます。
映像だけでノックアウトされた作品ってあまりなくて、もしかしたら邦画では初めてかもしれません。
とにかく映像と細かい演出だけでも素晴らしい。
70年代の頃の邦画のような雰囲気があり、フランス映画を見ているかのような錯覚を覚える。なんと表現するべきか、とにかく上質な映像に引き込まれます。
あわせて音楽も手を抜いていないところもすばらしいところ。シーンにピッタリはまっている感じがします。

終始虚無感を体全体であらわにしている綾野剛演じる主人公 達夫。そして社会の底辺に暮らす姉弟 千夏(池脇千鶴)と拓児(菅田将暉)。
今のこの時代にこんな家族がいるのかな?って考えてしまう、だけどすべてにおいてリアルだからすっと入り込んでしまう。
観ながら自然に泣いてしまいます。



かつて山で生きていた男と海辺の家に暮らす女が出会う。
それぞれ孤独で荒んでいた3人が苦難を乗り越えて家族として繋がって行こうとする、若者たちの藻掻きながらも前に進もう、幸せを掴もうとする必死さに撃たれる。
寝たきりなのに性欲をおさえられず藻掻き続ける千夏の父親が、「白蛇抄(1983)」の中の若山富三郎が演じた寝たきりの坊さんを彷彿とさせます。(小柳ルミ子演じる主人公に性処理をさせていた -_-;)
その性処理まで娘の千夏がなぜやらなくちゃならないのか?って考えてしまいます。
けれども、千夏が達夫に幼い頃の父親との楽しかった思い出を語るシーンがあってそこで納得できるワケです。
脇を固める俳優さんたちも名演を見せてくれます。特に高橋和也と火野正平が、素晴らしい!!



ラストシーンでの池脇千鶴の表情がなんと表現していいかわからないほど凄い!
泣きながら浜辺に向かい歩いて行き、追いかけてきた達夫を見つめながら泣くとも笑うともつかない表情をする...あの演技がとにかく凄すぎる、微妙な表情がいいっ!!
このラストシーンはこの先どんな映画が出てきても名場面で在り続けるでしょう。

ここで事細かに好きなシーンとかセリフを書き連ねようとしたけれど、余計な言葉で説明するより未見の方はとにかくこの作品を観て欲しいです。
ここで語れるのはそれに尽きますね。
劇場で観ていたらより感動しただろうって今さらながら思います。
今後、邦画もジャニーズに客寄せさせるだけの中身のない作品だけじゃなくて、こういう上質で魂を揺さぶるような映画を創るように頑張って欲しいものです。