My Cinema Talk World: 「シティ・オブ・ゴッド(City of God)」ー 今さらですが名作でしょう!

作品インデックス

2014/12/29

「シティ・オブ・ゴッド(City of God)」ー 今さらですが名作でしょう!



今年も残すところあと2日。
Twitterなどで2014年の映画ベストを公開されている方も多いようですが。
私は私が今まで観た映画ベストでもやろうかな…
って、生涯ベストなんてすぐに選べないですね、正直なところ
ただ生涯ベスト5、いやベスト3 ―― に入る映画がこれ「シティ・オブ・ゴッド」です。
またまたラテン映画、今度はブラジル映画です。
ブラジルなので言語はポルトガル語になりますね。余談ですがポルトガル語とスペイン語ってやっぱ似てますね、どちらか一つ習得すれば2ヶ国語できるようになると思いました。

シティ・オブ・ゴッド(原題:City of God)

監督:フェルナンド・メイレレス / 製作年:2003年


この映画、素晴らし過ぎて何度も繰り返し観てます、ついつい観ちゃうんです。
残念ながら劇場に行けなかったのでDVDを購入して観ました。
まずは驚くこと、これ実話なんです。
それを脚本化して実際撮り終えてみたら脚本以上の映画が出来上がってましたよーってことですよね。
本作が素晴らしすぎるから、テレビ番組の「シティ・オブ・ゴッド」を作っちゃったり、なにやら派生作品的映画も何本かあるようです。(未見です。)
製作総指揮にウォルター・サレスも名を連ねているのも気になっていたところ。
リオデジャネイロ近郊の貧困にあえぐファヴェーラと呼ばれるスラム地区が舞台で、そこに暮らす住人の視点で書かれた小説がベースになっています。
60年から80年代前半にかけてギャング化していくストリートチルドレンたちの世襲劇といった内容で、主要俳優のほとんどはオーディションで選ばれたリオデジャネイロ近郊にすむ子供達が演じているのが凄いところです。



キャスト

Buscape (ブスカ・ペ、Buscapé) - Alexandre Rodrigues(アレシャンドレ・ホドリゲス)
ギャングや拳銃が苦手な心優しい少年。写真が好きで、記者として下働きから地道に新聞社で働く。アレシャンドレは学校の舞台や短編映画に出演していた所を抜擢された。短編映画ではヴァポール2、TVドラマ版ではセリアードを演じている。

Li'l Ze (リトル・ゼ, Ze Pequeno: ゼ・ペケーノ) - Leandro Firmino da Hora(レアンドロ・フィルミノ・ダ・オーラ)
ダヂーニョの成長した姿。名前の意味は「小さなジョゼ」。ゼはジョゼを省略した呼称。ファベーラを一手に牛耳ろうとしてセヌーラと対立する。レアンドロは本作で俳優としてデビュー。短編映画でもディーラーのボス役で出演している。ちなみにレアンドロはリトル・ゼの凶暴な性格とは正反対の性格で、普段はとても温厚な人物である。そのため、リトル・ゼが子供を虐待するシーンでは心を痛めたという。

Li'l Dice(リトル・ダイス, Dadinho: ダヂーニョ、幼少時のリトル・ゼ) - Douglas Silva(ドゥグラス・シゥヴァ)
街一番のギャングを夢見る子供。あだ名の意味は「小さいサイコロ」。“心優しき3人組”とモーテル襲撃を企てたが失敗し他の街を転々とする。ドゥグラスは演技力と努力が認められ抜擢された。なおドゥグラスは、この映画の予行演習として撮られた短編映画及びTVドラマ版では、Darlan Cunha(ダーラン・クーニャ)演じるラランジーニャ(小さなオレンジの意)のコンビ(相棒)であるアセロラを演じた。

Cabeleira(カベレイラ) - Jonathan Haagensen(ジョナタン・アージンセン)
 “心優しき3人組”のリーダー格。あだ名の意味は「ロン毛」。ジョナタンはフェリペの兄で数多くの舞台を経験。短編映画ではマドゥルガダォンを演じている。

Bene(ベネ、Bené) - Phellipe Haagensen(フェリピ・アージンセン)
リトル・ゼのコンビで親友。カベレイラの弟。フェリピはジョナタンの弟。TVドラマ版ではエスペトを演じた。

Mane(マネ、Mané) - Seu Jorge(セウ・ジョルジ)
退役軍人で射撃のエキスパート。バスの車掌だったが、リトル・ゼに家族を殺された恨みからセヌーラ一派に加わり、幹部の一角にまでなる。通称二枚目マネ。演じるセウ・ジョルジは俳優でもあるが、サンバやファンク、ソウルをミクスチャーしたバンド、ファロファ・カリオカの元リーダー。現在はソロで活躍。日本でもCDが出ており、2005年にも来日した。

Cenoura(セヌーラ) - Matheus Nachtergaele(マテウス・ナッチェルガエリ)
リトル・ゼと敵対するグループのリーダー。マテウスは1997年のブラジル映画『クアトロ・ディアス』でデビュー。その後『セントラル・ステーション』など数本の映画作品に出演、主演男優賞なども受賞している。

 Angélica(アンジェリカ) - Alice Braga(アリシー・ブラガ)
 街一番の美人でチアーゴの彼女だったが後にベネの彼女になる。アリシはアメリカで活躍しているソニア・ブラガの姪。98年に映画デビュー、本作で2作目の出演。なお、同監督のカナダ・日本・ブラジル合作映画ブラインドネスにも主要人物として登場している。

Tiago(チアーゴ) - Daniel Zettel(ダニエル・ジッテゥ)
アンジェリカの恋人だったが、彼女に振られ麻薬中毒になる。 
Wikipediaより)

スタッフ・作品情報
監督:     フェルナンド・メイレレス
脚本:     ブラウリオ・マントヴァーニ
原作:     パウロ・リンス
製作:     アルドレア・バラタ・ヒベイロ
マウリツィオ・アンドラーデ・ラモス
製作総指揮:     ウォルター・サレス
ドナルド・ランヴァウド
音楽:     アントニオ・ピント
エド・コルテス
撮影:     セザール・シャローン
編集:     ダニエル・レゼンデ
公開:     2002年8月30日(ブラジル)
日本公開:      2003年6月28日
製作国     ブラジル、フランス、アメリカ合衆国
製作費     $3,300,000
興行収入     $30,641,770
原題:     Cidade de Deus


舞台は60年代から80年代初頭のブラジル リオデジャネイロ近郊のファヴェーラ(スラム街)という貧困の街。
まるで掃きだめのようなこの街は人々に「シティ・オブ・ゴッド(神の街)」と呼ばれ恐れられています。
この街に住むカメラマンを夢見る青年ブスカペが全知の視点(神の街を熟知し、幼少時代からの街の変化を目撃してきた)での物語の語り手です。
動的カメラワークのあか抜け具合と色彩での表現力の周到さ、音楽もいうことなし。
特に素晴らしいと思うのが“リアリティ”です。
こういう映画と巡り会えた時こそ、映画好きでよかったってしみじみ実感します。
普通はギャング映画とか、銃で撃ち合うだけの作品を観たいとはおもわないのです。
マーティン・スコセッシの「ギャング・オブ・ニューヨーク」とハーモニー・コリンの「スプリング・ブレイカーズ」もその例外で好きな作品ですが、「シティ・オブ・ゴッド」はそれらを大きく凌駕する作品でしょう。
「スプリング・ブレイカーズ」のバイオレンスシーンにおいては、この作品の影響を大きく受けているのではないかしら...。

”優しき3人のギャングたち”が中心に描かれる60年代を経て、70年代に入ると”優しき3人のギャングたち”にからかわれながらも野望を抱いて成長したリトル・ダイス(リトル・ゼと改名)を中心にいくつかの抗争を経て街は分断されます。
「一体どこの戦場だよ」というほどの武器でこれでもかってくらいの撃ち合い、殺し合いが続く。
5、6才から16、7才までの文字も読めない子供達が、入り乱れて掃きだめのような街での抗争。生きながら得る楽しさや幸せ、そして死の意味が分からないうちからコカイン、マリファナを吸引して挙げ句ギャングとして無意味な殺し合いで子供たちは短い人生を終えていく ――
哀しすぎる現実を、淡々とドキュメンタリー風に繊細にかつスタイリッシュに描いています。
子供だからといっても手加減なし、運が悪ければ生き延びられないだけ。
現実は現実として捉える情け容赦のない描写に引き込まれつつ、あまりのリアリティに思わず目を覆いたくなります。
冒頭の食用のニワトリが逃げ出す、その「鶏目線」のくだりを見ただけでも演出の素晴らしさを見せつけられます。
映画が始まって最初の10分を観ただけで、たちまちグイグイ引き込まれてしまうのです。
まるで90年代にはじめてタランティーノとかフィンチャーの映像を観たときのような衝撃でした。

兄がリトル・ゼ(リトル・ダイス)に殺されても武器を手に入れ「敵を討つ」という短絡的行動に走らず、神の街を出て夢を叶えたブスカペ。
ラストで武器や暴力なしで勝利を手にしたブスカペの姿にカタルシスの境地とも言える爽快感を覚えること間違いなし、これぞ映画の醍醐味ですね。
先に「鶏目線」のオープニングの話題に触れましたが、この利口で注意深い、運のいいニワトリこそがブスカペを表現しているのです。

本作で特に素晴らしい演技を見せてくれる選ばれた俳優たち

リトル・ダイス(リトル・ゼの子供の頃)


リトル・ゼ(リトル・ダイスが成長し改名)


カベリエラ(心優しい3人のギャングの中の1人)


ベネ(リトル・ゼの幼なじみ。暴力や殺しを嫌う優しい青年)


ブスカペ(本作の主人公。神の街から出てカメラマンを目指す)


演じる子どもたちはオーディションで選ばれた素人。
役2000人の応募者の中から顔がいいとかどこか惹きつける部分を持っているなどから選抜されたそう。
最終的に200人ほどが選ばれ半年以上に及ぶ講義や演技指導が行われました。
彼らが受けた演技の勉強はドキュメンタリー色を強めるために必須なもの ―― リアリティを出すために欠かせない演技。
セリフをおぼえずのアドリブ、さらにカメラを意識しないで演技することでした。
しかも演技を離れた時に私生活に悪影響を及ぼさぬよう感情ではなく感覚で演じる方法までも会得して行ったそうです。
その成果が如実に観られるのはプロの俳優と並んだ時。もともとの俳優の演技が完全に素人たちから変に浮いてしまっているのがわかります。
ちなみに残虐なリトル・ゼ役の俳優レアンドロ・フィルミノ・ダ・オーラは、もともと穏やかな性格だったために「怒り」や「凶暴」を体現するのにかなり苦労したそうです。

本作で特に素晴らしいシーン(わたくし選)

心優しい3人のギャングの中の1人が「この街に留まっていては長くは生きられない」ということを逃げ延びた木の上で突如悟るシーン。



ブスカペがアンジェリカをものにできるかと思ったシーン
お金がなくてとりあえず安いカメラを手に入れ、アンジェリカを撮り続ける。
この時代の映像はブスカペが愛用のカメラで撮った写真のよう。
まるでLOMOやスメナのようなトイカメラの色合いでみずみずしく描かれています。




「シティ・オブ・ゴッド」を観て思うのは、国家や警察は権力を振りかざし押さえつけるのみで無力な子供達を守ることをしないということ。
だからこそ子供達は自ら武器を持つしかなくなっていくのでしょう。



二枚目のマネ役で出演しているセウ・ジョルジのテーマ曲もメロディアスで大好きです!