ジェームズ・マカヴォイとジェシカ・チャステインが演じきった男と女それぞれの生きづらさ
Huluで「ラブストーリーズ コナーの涙」鑑賞している途中で、急に思い出す...DVDを購入して未見のまましまってあったことを ――
「コナーの涙」「エリナーの愛情」そしてこの2本を編集して、1本にした作品をDVDで視聴。
計3本を一気見しました。
ラブストーリーズ コナーの涙/エリナーの愛情(原題: THE DISAPPEARANCE OF ELEANOR RIGBY: HER/HIM/THEM)
監督: ネッド・ベンソン / 製作年:2013年
ストーリー最愛の子どもの死をきっかけに互いの心がすれ違い、やがて別れを決断したカップルが、再生へと向かう紆余曲折の道のりを、男女それぞれの視点から捉えた2つの作品で描き出した異色作。本作はその男編。主演は「つぐない」のジェームズ・マカヴォイと「ゼロ・ダーク・サーティ」のジェシカ・チャステイン。監督は、これが長編デビューのネッド・ベンソン。(allcinemaより)
ニューヨーク。ある日、アパートから妻エリナーの姿がなくなっていた。小さなレストランを経営する夫のコナーは、幼い我が子を失った悲しみを2人で乗り越えようと腐心してきた。しかし、エリナーの気持ちを量りかねる日々に苦悩は深まるばかりだった。やがて彼女が大学に通い出したことを知り、ようやく再会を果たしたコナーだったが…。
キャスト
ジェームズ・マカヴォイ/ コナー・ラドロー
ジェシカ・チャステイン/ エリナー・リグビー
キアラン・ハインズ/ スペンサー・ラドロー
ビル・ヘイダー/ スチュアート
ニナ・アリアンダ/ アレクシス
ヴィオラ・デイヴィス/ フリードマン教授
ウィリアム・ハート/ ジュリアン・リグビー
ジェス・ワイクスラー/ ケイティ・リグビー
イザベル・ユペール/ メアリー・リグビー
スタッフ・作品情報
監督: ネッド・ベンソン
製作: カサンドラ・クルクンディス
ネッド・ベンソン
ジェシカ・チャステイン
トッド・J・ラバロウスキ
エマニュエル・マイケル
製作総指揮: カーク・ダミコ
ブラッド・クーリッジ
メリッサ・クーリッジ
キム・ウォートリップ
ジム・ケイシー
ピーター・パストレッリ
脚本: ネッド・ベンソン
撮影: クリストファー・ブロヴェルト
編集: クリスティーナ・ボーデン
音楽: サン・ラックス
公開 2014年10月10日(アメリカ)
2015年2月14日(日本)
原題: The Disappearance of Eleanor Rigby: HER/HIM/THEM
幸せだった、あの頃...(OMDの「So in Love」が流れるシーン)
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男女が出会い、結ばれ、不幸にも子供を亡くし、それをきっかけに二人の関係は歪(ひず)んでいく。
一連の出来事を男性側から描いた「コナーの涙」は、2人に何が起きたのかを時系列で追っている。
一方向から見ているので、エリナーの心の動きはわからない。
彼女は、ちょっと心を病んでいて衝動的で身勝手な女としか見れない。
コナー(ジェームズ・マカヴォイ)という男は頭が硬い、典型的な男性思考で動いていて、それにエリナー(ジェシカ・チャステイン)が辟易したのだろう。
エリナーが家を出ても、ストーカーのようにつけ回すコナー。
エリナー目線で同じ物語を描く「エリナーの愛情」では、ストーカーしているのはある意味彼女なのだ。
幸せだった2人 |
コナーは、息子を心配する父親(キアラン・ハインズ)に手厳しい...母親を捨て別な女性と再婚したから。
この父親が、息子を慰めるためにステキなセリフを言うのだ。
子供の死を受け入れられない息子に対して
“ 流れ星は一瞬のことだ ―― それを見られただけでも素晴らしい ”
“ 人は誰でもそれぞれ悩みを抱えて生きている ”
「エリナーの愛情」では、エリナーの家族の問題もさりげなく描かれる。
彼女の両親にも、“夫婦の危機”らしき事態が訪れている。
「夫婦が長く続く秘訣は?」とエリナーがきくと、彼女の父親(ウィリアム・ハート)が答える
“ 男女が長続きする秘訣は、忍耐 ―― 別れを切り出さないことだ ”
2本を通して見て、思い出してしまうのが「ブルーバレンタイン」だ。
楽しかった時間を経て、結婚。
家族として暮らす、今現在のやるせない状況の描き方。
うかれてレストランで無銭飲食をして、その帰り芝生の上で抱き合いながら目にした暗闇に浮かぶ幻想的な蛍の灯。
コナーとエリナーにとって過去の楽しかった時間、幸せの象徴として何度かこのシーンが出てくる。
物悲しい街明かりのシーン |
対比されるシーンが、今現在の2人がそれぞれ孤独で夜の街の明かりの中に立つ姿 ――
美しいシーンなのに、なんとも物悲しい空気に溢れている。
先にも触れたが、本作は「男女の思考・言動の違い」が浮き彫りになっている。
コナーは、生真面目・頑固すぎてその場の雰囲気で行動することができない。
他者が聴いている音楽を「うるさい!」と言って勝手に止めてしまったりする。
エリナーは、亡くなった我が子のおもちゃやベビーベッド一式をコナーがクローゼットにしまったことに傷ついた。
コナーにして見れば、新しい一歩を踏み出すためにとった行動だろう ――
男らしさというのは、無神経と隣り合わせとも言える。
さて、もう一つ気づくことがある ―― エリナーの行動だ。
確かに感情で行動する典型的な“女性資質”と言える。
30歳くらいだと思うが、完全に大人になり切れていない部分がある気がする。
映画を見終えても、結局彼女は何がしたいのかが見えてこない。
エリナーの母親(イザベル・ユペール)は、アルコール依存性らしく、昼間からワインを飲んでいる。
子供の死から立ち直れないエリナーの前で
「私は、母親になりたくなかった」
などと吐露する。
そんな母親の影響からか、自我の確立がしっかりできていないのではないかと思えるふしがあるのだ ―― 深読みしすぎかもしれないが...
彼女が復学した大学の教授(ヴィオラ・デイヴィス)とのふれあいはやりとりが気が利いていてなかなかよい感じに描かれている。
「エリナーの愛情」のラストが秀逸だ。
2人が、新しい道を歩き始めていることをほのめかすラストのシークエンス。
ただただ、ジーンとして切なさに包まれる ―― その空気感に浄化される心地がするのは、Son Luxの音楽のせいだろうか。
音楽といえば、特にこの2曲!
Son Luxの「No Fate Awaits Me」
懐かしい80年代のヒット曲、OMDの「So in Love」(絶妙なシーンで流れる!)
はっきり言ってしまうが、「コナーの涙」「エリナーの愛情」だけ見れば事足りるので、3本目(英語のタイトルは「THEM」)は必要はないのかもしれない。
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