戦争を背景に自分を貫き通したヒロインを描いた秀作
ずっと見たかった映画です。
ケイト・ウィンスレットが驚くほど痩せています。
最初は、ニコール・キッドマンがハンナ役で撮影に入るも妊娠が発覚し、降板しました。
第81回アカデミー賞で、ケイト・ウィンスレットが見事主演女優賞を受賞しています。
愛を読むひと(原題: The Reader)
監督: スティーヴン・ダルドリー / 製作年:2008年
ハンナ:「エッチは本を読んだあとで...ね!」
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ストーリー
1958年のドイツ。15歳のマイケルは偶然出会った年上のミステリアスな女性ハンナに心奪われ、うぶな少年は彼女と彼女の肉体の虜となっていく。やがて度重なる情事のなかで、いつしかベッドの上でマイケルが本を朗読することがふたりの日課となる。ところが、ある日突然ハンナは姿を消してしまう。8年後、法学生となったマイケルは、ハンナと思いがけない形で再会を果たす。たまたま傍聴したナチスの戦犯を裁く法廷で被告席に座る彼女を見てしまったのだ。裁判を見守るマイケルは、彼女が自分が不利になるのを承知で、ある“秘密”だけは隠し続けようとしていることに気づく。その秘密を知るただ一人の者として、マイケルは葛藤し、答えを見い出せないまま苦悩を深めていくのだが…。(allcinema より)
キャスト
ケイト・ウィンスレット / ハンナ・シュミッツ
レイフ・ファインズ / マイケル・バーグ
デヴィッド・クロス / 青年時代のマイケル・バーグ
レナ・オリン / ローズ・メイザー、イラナ・メイザー
アレクサンドラ・マリア・ララ / 若き日のイラナ・メイザー
ブルーノ・ガンツ / ロール教授
スタッフ・作品情報
監督: スティーヴン・ダルドリー
製作: アンソニー・ミンゲラ シドニー・ポラック
ドナ・ジグリオッティ レッドモンド・モリス
製作総指揮: ボブ・ワインスタイン ハーヴェイ・ワインスタイン
原作: ベルンハルト・シュリンク 『朗読者』
脚本: デヴィッド・ヘア
撮影: クリス・メンゲス ロジャー・ディーキンス
音楽: ニコ・ムーリー
原題: THE READER
マイケル15歳、ハンナ30代前半。年の差カップル |
初見だけでは、マイケル(デヴィッド・クロス)とハンナ(ケイト・ウィンスレット)の言動に理解しづらい部分があるだろう。
マイケル
裁判を見学しているうちに彼女が文盲であることに気付きながら、結局は彼女に有利に動くであろう証言をせずに逃げてしまった。
ハンナ
15歳のマイケルと関係を持ち、本を読ませ何をしたかったのか。
なぜ、“文盲”であることをひた隠しにしなければならなかったのか。
2度目の鑑賞にしてようやく気づく。
ハンナの何気ない行動で、その性格がよく見えてくるから分かってくることなのだ。
ハンナがマイケルを“朗読者”として選んだ理由は、彼の性格を見抜いたからだ。
マイケルは、帰宅途中の電車の中で気分が悪くなり急いで下車し、近場の路地に吐いてしまう。
気分の悪さ、情けなさと心細さで思わず泣きだしてしまう。
ハンナはそんな彼に手を差し伸べた ――
彼女は、もちろんマイケルを助けたい気持ちもあったが一方で彼が見せた弱さが自分の思いの儘になるという期待もあったのだ。
ハンナは生真面目な性格だった。
念入りに靴の汚れを落としてから家に入る
異常なほど靴もピカピカに磨く
ブラジャーまできちんとアイロンがけする
与えられた仕事を粛々とこなすのが、彼女の性格だ。
さりとて、何の罪もない小さな子供たちの中から1日10人をアウシュビッツに送り込む仕事をためらいなくやってきたことが許される訳はない。
しかし、“悪行”と認識していてもその状況下でそれに抗うことができたか?
1人の非力な、文盲にコンプレックスを持つ女にはどうすることもできるはずもない、国家も絡んだ不可抗力に目を瞑るしかないだろう。
彼女は裁判が進んでいく中筆跡鑑定を求められるも、それを拒否し罪を引き受け、牢獄に入ることになる。
その一連の流れとハンナと過ごした夏の日々の断片で、マイケルは彼女が文盲であることを知るのだ。
マイケルは、なぜそんなハンナを助けなかったのか ――
「文盲であることを明かされたくない」という彼女の気持ちが痛いほどわかったからだ。
また、その時の彼は大学で法律を学ぶ学生で、まだ大人になりきっていなかったこともあるだろう。
ハンナから、収容所の子供と同じこと(本の朗読)をさせられたことを許せない気持ちも少なからずあったのだろう、そう思った。
その後マイケルは、彼女を救えなかった無力さから心を閉ざしてしまう。
20年後、ハンナが刑期を終えて刑務所を出るとき、マイケルが彼女の面倒を見ることになる。
しかし彼の言葉で思い立ち、彼女はある決断をして彼と会うことはなくなってしまう。
20年という月日は、マイケルを成長させただけでなく、一方向からしか物事を捉えない人間に変えてしまったのだろう。
マイケルとハンナが過ごしたひと夏、泊りがけのサイクリング旅行は殊更美しく描かれている。
本から様々な喜怒哀楽を学び、“朗読者”として選んだマイケルに、若い娘のように恋をしてしまったハンナ ――
文盲であることをひた隠す彼女は、おそらく男性と愛し合ったことなどはないのかもしれない。
恋愛の駆け引きなども知らないハンナが、マイケルと同じくらいに初々しく輝いて見える。
親子と間違われて、わざとキスするマイケル |
ロマ族は、ユダヤ人よりも下層の人種で現在でも差別され続けているという。
よって、文盲であることを異常なまでに隠蔽し続けたハンナの懸命さがようやく理解できてくる。
余談ではあるが、ケイト・ウィンスレットが惜しげもなく全裸で挑んだ本作。
相当減量したのか、それとも後ろ姿だけ別人なのだろうか ――
かなりガリガリで驚いてしまった。
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