My Cinema Talk World: モーターサイクル・ダイアリーズ

作品インデックス

2012/05/20

モーターサイクル・ダイアリーズ



ストーリー

1952年、アルゼンチンのブエノスアイレスに住む医大生エルネストは、友人のアルベルト・グラナードと共に1台のバイク(ポデローサ号)にまたがり、12,000キロの南米大陸縦断旅行へ出かける。途中、南米先住民族(インディオ)や、チリの最下層の鉱山労働者、ペルーのハンセン病患者らとの出会いなど、行く手に巻き起こるさまざまな出来事を通して、南米社会の現実を思い知らされる。
映画のラストに80歳を超えたアルベルト・グラナード本人が少しだけ登場する。また、アルベルト・グラナード自身が『モーターサイクル・ダイアリーズ』の撮影に同行し撮影風景を記録したメイキング・ドキュメンタリーの『トラベリング・ウィズ・ゲバラ』(2004年) もある。
(Wiki より)

キャスト
エルネスト・ゲバラ・デ・ラ・セルナ(チェ・ゲバラ) −  ガエル・ガルシア・ベルナル
アルベルト・グラナード −  ロドリゴ・デ・ラ・セルナ
チチナ・フェレイラ −  ミア・マエストロ

スタッフ・映画情報
監督      ウォルター・サレス
脚本      ホセ・リベーラ
製作      マイケル・ノジック、エドガード・テネンバウム、カレン・テンコフ
製作総指揮      ロバート・レッドフォード、ポール・ウェブスター、レベッカ・イェルダム
音楽      グスターボ・サンタオラヤ
撮影      エリック・ゴーティエ
製作会社      Film4 Productions
配給      フォーカス・フィーチャーズ(アメリカ) 日本ヘラルド
公開      2004年5月7日(ブラジル)2004年7月29日(アルゼンチン)2004年8月27日(イギリス)
    2004年9月24日(アメリカ)2004年10月9日(日本)
興行収入      $57,642,814
原題      Diarios de motocicleta



いいなぁ~!これぞ男のロマンだ

これは偉大な革命家の伝記ではない。志しを同じくする若者がしばし併走する旅の話である...
印象的な文言で作品は始まる。
そう、革命家チェ・ゲバラではなく、彼がチェになる前の23歳の医学生だった頃に友人アルベルト・グラナードと一台のおんぼろバイクで南米を北上する過程を描いたロードムービーだ。
距離にして12,000キロ以上にも及びその上手持ちのお金もない無謀ともいえる旅だ。
信じられないがゲバラ著「モーターサイクル南米旅行日記」を元に、また細かい場面描写においては存命中のアルベルトに同行してもらい当時の逸話を聞きとりながら撮影された事実に限りなく近い作品だ。
もともと酷い喘息だったエルネストが道中何度かまるで自分の身体を自ら傷めつけるような行動をとる。
酷い発作に襲われながらもこの旅を無事に終えることができたことは偶然もあるかもしれない、しかし彼の強靭な精神力と意思の強さの成せるわざであることは大きい。
アルベルトも一見、口八丁手八丁の軽い乗りの若者に見えるが、旅を終えることだけでなく大きな夢を目指す情熱はエルネストと同じだ。

マチュピチュに辿り着く2人

途中、映画のタイトルでもあるモーターサイクル(彼らはポデローサ号と名付ける)と長旅で酷使されたため鉄くず一歩手前の状態で別れを告げヒッチハイクしながらの旅になる。
歩きの旅では、旅先での見知らぬ人との距離を近づけるだけではなく自分達が想像だにしなかった真実の南米の現状、人々の社会的不平等を知ることとなる。
炭鉱で出会った貧しい夫婦に「何のために旅をしているの?」と訊かれ思わず言葉に詰まる2人。
やむなく子供を知人に預けながら仕事探しの旅をする夫婦に自分たちの旅を道楽としか受け取ってもらえないだろうという本心があったのだろう。
特にペッシェ博士から紹介されたサンパブロのハンセン病施設では、医療の手伝いをするだけでなく病人の弊害になっている病人への差別や人間を隔てるさまざまな壁を打ち破って行く。
2人にとって施設での経験は医師としての実績だけではなく彼らの生き方を変えるほどの大きなものになる。
殊、エルネストにとってはーー。
エルネストの誕生日とお別れ会でのスピーチ、そして川を挟んで隔離された患者とお祝いするために誰も泳いで渡ったことがない川を渡る場面は後に革命家チェになっていく彼の意志の強さを連想させる印象的なシーンだ。

若い時代にしかなし得ないものがある
そして、若い魂にしか感じ得ないものがある。
エルネストが旅立つ間際、「きみがうらやましいよ」と父親がかけた言葉にこういう本音が込められていると感じた。
また、重い喘息の息子を見送る母親の気持ち…
エルネストを演じるガエル・ガルシア・ベルナルは実際のゲバラに比べ端正な顔立ちだが意思の強さを感じさせるし、何より人懐こい笑顔が魅力的です。
彼の作品で『天国の口、終りの楽園 』も観ているが、こちらもオススメのロードムービーです。(後ほど感想文UPします。)
共演のロドリゴ・デ・ラ・セルナも素晴らしいアルベルトを演じ切っていたが残念ながら彼は他の作品にはあまり出ていないようです。

チェ・ゲバラの“チェ”とはアルゼンチンで使われるスペイン語で「おい」と愛着を込めて呼び掛ける言葉。
50年以上前に故郷南米アルゼンチンを出発しチリ、ペルー、マチュピチュ、サンパブロ、カラカス、....最後にはアメリカ大陸へ渡った青年2人の旅の物語である。

一生に一度、こういう旅に出てみたいものです。
殊エリック・ゴーティエの撮影はすばらしく、ショーン・ペン監督の『イントゥ・ザ・ワイルド (2008)』にも影響を与えることになります。