My Cinema Talk World: トレジャーハンター・クミコ(2014)

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2016/01/17

トレジャーハンター・クミコ(2014)


コーエン兄弟の『ファーゴ』絡みの映画だときいていたので、ずっと気になっていました。念願かなってようやく見ました。
残念ながら、まだDVD化はされていないようです。
昨年9月にWOWOWで初放映されております。

ストーリー
東京でOLをしている29歳の独身女性クミコは楽しくない仕事も、結婚を急かす母親も苦手だった。そんなクミコは、フィクションなのに「本作は実話に基づく」と冒頭にテロップが出る映画「ファーゴ」をVHSビデオで繰り返し見ては、スティーヴ・ブシェミ演じるカールが大金入りブリーフケースを埋めた地点を想像する。会社のクレジットカードを預かったクミコはそれで旅費を調達し、「ファーゴ」の舞台ファーゴに向かうが……。 
WOWOWより)


キャスト
クミコ:     菊地凛子
サカガミ:     勝部演之
カナザキ:     河北麻友子
ミチ:     東加奈子
老女:     シャーリー・ヴェナード

スタッフ
監督・脚本:     デヴィッド・ゼルナー
脚本 :    ネイサン・ゼルナー
撮影:     ショーン・ポーター
音楽:     ジ・オクトパス・プロジェクト
原題:     Kumiko, the Treasure Hunter

日本という国はいつからこんなに住みづらくなってしまったのだろう。
この映画を見ていると日本の未来を憂わずにはいられなくなる。
毛色が違う人種を見る目の冷たさ、30歳過ぎて独身でいる女性への偏見…
人種差別は欧米ほどではないかもしれない。
しかしながら、ある年齢を過ぎた女性への偏見はピカイチだ、日本という国は。
クミコの孤独感が痛いほど伝わってくる。
クミコが勤める会社の社長、OL仲間、学校の同級生、「結婚、結婚」と騒ぐ母親までもがクミコにとっては敵だ。
海外映画のわりには、日本の描かれ方が妙にリアルである。

コーエン兄弟の『ファーゴ』は、れっきとしたフィクション作品だ。
映画の冒頭で
“これは実話の映画である”
とこれみよがしに出てくるところがくせものだ。
それを信じて会社のクレジットカードでアメリカに渡ってしまうOLクミコの物語も、“実話ではない”ところが面白いのかもしれない。
確かにノースダコタのファーゴの近郊で、日本女性 コニシタカコさんが凍死していた事実は存在する。
しかし、映画『ファーゴ』でスティーヴ・ブシェミが隠したお金を探していたのではないというのが本当のところだ。

本作において、クミコは本気でブシェミが隠したスーツケースがあると信じていたのか?
私はそうではないと思えて仕方がないのだ。
では、何のためにすべてを捨ててまでファーゴを目指したのか?
日本を飛び出すための理由が必要だったのではないか。
日本へは、二度と戻らないという覚悟の上での行動だったと思えてくる。



アメリカに渡ってからのクミコは、日本で暮らしていた時と一変。かなりアクティブに変化していく。
面倒見のいい警官に(演じていたのは本作の監督デヴィッド・ゼルナー!)ジャケットと靴を買ってもらい、靴ひもまでしめて貰うシーンがいい。
日本では、優しくしてもらったことがなかったクミコは何を勘違いしたのか、警官に衝動的にキスしてしまうのだ。

旅をしている間に、彼女はすっかり目的であるファーゴに取り憑かれてしまったように見える。
警官に「そもそも『ファーゴ』はフィクションなんだ」と言われて激しく傷つくクミコの辛さが胸に迫る。
反面、ラストの爽快感はなんだろう…日本を飛び出した時、置き去りにしてきたウサギのブンゾーと再び出会えたのも救いなのかもしれない。。。
クミコがずっと着ていたパーカーの色が、『ファーゴ』の雪景色の中のうつぶせの死体の着ていた赤だった。かなり視覚に訴えてくる。

救いのない日常を捨て旅に出て、引き返せないところにきてしまった主人公。
なんとなしに『テルマ&ルイーズ(Thelma and Louise −1991-)』を思い出してしまった。
菊地凛子、いいね!Good Job!!

これからも国内外問わず活躍していける女優さんだと思います。

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