1996年の公開当時、はるばる東京まで見に行った思い出の作品です。
アルチュール・ランボーは映画以前に私がこよなく愛する詩人で、しかも当時注目し始めていたディカプリオがランボー役だと聞いて見に行かずにいられませんでした。
個人的にはランボーが詩を書くことに目覚めた頃から描いてほしかった...ただ、映画を見終えた直後は「悪くはないかな」という感想でした。
ほんと、懐かしいですわ~
太陽と月に背いて(DVD)
喜怒の激しいランボー。 |
ストーリー・解説
(映画.comより)
初老の詩人ヴェルレーヌ(デイヴィッド・シューリス)をイザベル・ランボー(ドミニク・ブラン)が訪問した。彼が待っているはずの兄アルチュールの遺稿を返して欲しいという。ヴェルレーヌは少年ランボーに会ったときのことを思い出した……。1871年、16歳のランボー(レオナルド・ディカプリオ)新進気鋭の詩人ヴェルレーヌを頼ってパリに出てきた。彼の妻の実家に逗留したランボーは、その傍若無人な奔放さでヴェルレーヌの妻マチルド(ロマーヌ・ボーランジェ)やその両親の反感を買い、まもなく家を追い出される。舅夫妻の仕打ちの激怒したヴェルレーヌはランボーの住居を手配し、まもなく若きランボーと恋愛関係に。ランボーは一時故郷シャルルヴィルに戻るが、再びパリでヴェルレーヌと同棲を始めるが。
キャスト
レオナルド・ディカプリオ:アルチュール・ランボー
デビッド・シューリス:ポール・ヴェルレーヌ
ロマーヌ・ボーランジェ:マチルド
ドミニク・ブラン:イザベル・ランボー(ランボーの妹)
スタッフ・映画情報
監督 アグニエシュカ・ホランド
脚本 クリストファー・ハンプトン
製作 ジャン・ピエール・ラムゼイ・レヴィ
撮影 ヨルゴス・アルバニティス
製作年 1995年
製作国 イギリス・フランス・ベルギー合作
公開 1995年11月3日(アメリカ)・1996年10月5日(日本)
原題 Total Eclipse
ブリュッセルでヴェルレーヌと別れた後、故郷シャルルヴィルに戻り『地獄の季節』を執筆 |
作品以外のランボーがらみのお話でひとり盛り上がってしまいました...とさ
原題の「Total Eclipse」というタイトルがなんともステキ。言わずもがな「皆既日食」または「皆既月食」のことですが、詩人としての短い期間を生きた天才ランボーを刹那的な天文現象に喩えたのか、太陽と月をランボーとヴェルレーヌと見たのか。。。とにかく、映画にピッタリだと思います。
過去にランボーの一連の詩集や恩師やヴェルレーヌなどとの書簡などを読みましたが、まだ十代にもかかわらず凄い世界観を持っていたのには驚きました。
自然の摂理や道理をすっかり悟りつくしている印象を受けました。
図書館に籠っているのが好きだったようなので、すべて書物から得た知識とそれを独自に咀嚼する才能にも長けていたのだと思われます。
そのランボーを役者が演じるのはかなり難しいのではないかと心配だったのですが、ディカプリオは見事に彼なりのランボーを演じ切っていました。
ヴェルレーヌ役のデビッド・シューリスも酒を飲んで馬鹿になって嫁に暴力を振るう情けないさまがはまっておりましたが、それに引けをとらないいい演技をみせています。
それにしてもヴェルレーヌのあのジットリとしたランボーを見つめる目つき...真に迫ってましたね、なんか気持ちわるいんですけどぉ
あのあたまのハゲ具合ですが、あの頃まだ20代後半だったはずです。
写真や絵でみるランボーは美少年のようですから、レオさまはハマり役ですね |
15歳から詩を書き始め、19歳で詩作をやめて外人部隊に入った後、キプロス島では建設会社で働きその後もあらゆる国を点々としアフリカで商人になったランボー。
天才ランボーでも自分の寿命はよめないだろうけれど、夭折することをなんとなく感じとっていたのか短い期間で思いつくままに何でも行動に移していきます。
詩においても同じ場所にとどまらず次々と開拓を試みていきます。
ランボーが必死で成し遂げようとしていたものが詩作では不可能であると気づくや、19歳で筆を置いてまったく違う世界に飛び込んでしまいます。
一方ヴェルレーヌは、劇中ランボーが指摘した通り同じ失敗を幾度も繰り返します。
愛憎の果てにランボーの手をブチ抜いたブリュッセル事件で逮捕されて2年牢屋暮らしをしても懲りなかったようで教職についている間に教え子の少年に手を出したり、酒癖が悪いのも治らなかったようです。
レオナルド・ディカプリオは、ランボーの変人的天才ぶり、時々顔をのぞかせる少年っぽさと田舎もの丸出しの下品な振る舞いをあますことなく鬼気迫る演技で見せつけています。(マチルドの家で犬の置物を盗むシーンとか。イギリスの図書館で詩作の最中に叫ぶとこ、初めて見た海に大喜びする無邪気なとことか…ね )
21歳。ちょうど輝いている時期でもあり、「太陽と月に背いて」「ロミオ+ジュリエット」そして「マイ・ルーム」を経て「タイタニック」の4作品でルックス的に一番美しい、”旬のレオさま”(古っ!)を拝顔することができます。
特にこの時期の慟哭するような泣きの演技がいいんですよね。
(個人的に...です、そう思っています)
余談 ― ランボーの作品について
映画に直接関係ありませんが、ランボーをこれから読まれる方はちくま文庫『ランボー全詩集』(宇佐美斉訳注)がおすすめです。
自然に入ってくる訳とランボーのほとんどの作品が網羅されています。
(2010年河出書店版は未読なのでわからないのですが…)
私は「地獄の季節」はヴェルレーヌといろいろなことがあった後の作品のためか全体に暗くて重い気がしてあまり好きではないです。
初期と後期の詩編とイルミナシオンの中のいくつかの詩が好きです。初期詩集はまだ他の詩人から学んだ方法が試されている気がします。
「太陽と月に背いて」にも使われている「永遠」という作品も好きな詩です。
今回は、自分の趣味に突っ走ってしまいましたわぁ
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